[2007年06月02日(土)]
あきらめない 〜非行少年たちの人生と環境を見つめて〜
2007年度第一回親と子のこころの対話研究会がえーるピアで行われました。
今年度のテーマは「子供虐待と非行・いじめ」。
今日の講師の方は現瀬戸少年院の教育調査官である向井氏で、
タイトルが表題の「あきらめない〜非行少年たちの人生と環境を見つめて〜」でした。
向井氏は「非行少年の再犯予防〜LD・ADHDに対する少年院の取り組みから」や
「軽度発達障害児に対する研究機関・」学校との協働」などの著書があり
非行の再犯予防などの実践を踏まえての講演でした。
最初に感想を述べると、最近参加した中では一番とも言える内容の面白さで
時間延長をしてもまだ足りないと思えるほど本当に有意義な講演でした。
彼らのライフコースがどの様なものだったかというところで、
ある程度予想はしていたものの、改めて現実を認識させられました。
@小学校から勉強についていけない
@友達ができなかった
@いじめられた、いじめ返した
@親に無視された、溺愛された
@悪い友達が出来て抜けられなくなった
@何らかの病気を抱えていた
@周囲が暴力的であった
基礎学力や知識の乏しさ、たとえば「あいうえお」が言えない、足し算が出来ない等の子が多く、向井氏によると、テストをすると20年前の非行少年の半分ほどしか点数を取れないとのこと。
実例として分数が計算ではできても、
カーテンを1/3開けるということは理解できないという
頭の中で生活概念に変換することが出来ないという話や
「ごみ箱を捨てて」と言われた子が、ごみ箱ごと袋に入れて捨てたという例等
理解力に欠ける子がいるという話などをされ、
また、「言語・国語」「数の概念・認識」「生活や認知」の問題の他
身体機能の問題も挙げられました。
このような問題行動等を発達環境の視点から理解していくことが必要で
発達上の課題があるとどんな問題がライフコース上、
派生するかと言う点を押さえながら、
彼らに合った必要な指導をしていくことが大切。
職員の手作り補助器具で、文字が川のように見えていた
学習障害の少年の問題をサポートした話においては、
職員の少年たちへの係わり方がよく分かったし、
的確な指導とその次へのステップを考えながらトータル的にサポートしているのが感じられました。
少年が本を読むのに一々文字を指で指しながら読んでいて
その為に時間がかかっていることを見つけた職員が、
試しに定規のようなものを作って使わせてみると早く読めるようになり、
学力がみるみる上がっていったそうですが、
文字が川のように曲がって見えていたことを
本人は誰もがそう見えていると思っており、
その障害のために両親や周囲から「何をやっても遅い」とか「のろま」と
馬鹿にされていたとのこと。
こういった障害を自分が持っているということが分かって落ち込んだけれど
(「セルフラベリング」の問題)
職員の「目が悪い人がめがねを使うのと同じ」というフォローによって立ち直ったという件には職員の方の深い愛情を感じました。
会話の内容が正しく理解できないという事例として挙げられた
ごみ箱を袋に入れて捨てた少年に対しては、
きちっとした言語モードで伝えてあげるという対処をされています。
推論が苦手なので、主語をはっきりさせ、細かく説明すると言うことをし
「このごみ箱の中のごみを赤い袋の中に入れて〜」と伝えることによって
確実にその少年は、こちらが意図したことを出来るようになったとのこと。
この少年も、今まではごみ箱をそのまま捨てたようなことをやっていて
親から殴られ、どうして怒られたのか分からないままだったといいます。
その子のいいところを見つけること、
その子に合った指導をすることによって、
自信が出来、生き生きしてくるのです。
少年院では、このように個々のニーズを理解し、処遇・教育計画を立てるとのこと。
発達上の課題を抱える少年特有のリスクとして次のようなものが挙げられます。
@学業の失敗
@社会的失敗
@感情の損傷
@差別的処遇
@自尊心低下
これらの問題をいかに予防するかが勝負になりますし、
非行と再犯のリスクファクターであるリスク因子をいかにコントロールするかが課題となってきます。
長くなってきたので端折りますが、
問題行動や反社会的行動を予防する基本戦略として
「社会統制のゆるみが逸脱を生む」というハーシーのボンド理論である
非行を抑止する4つの社会的絆(Bonds)、すなわち
@愛着(先生や親に対する愛情・尊敬)
A努力(得たものを失うことを恐れる)
B多忙(合法的な活動で非行にかかわる時間減少)
C規範意識(罪の意識の高さ)
を上げ、発達に問題のある子はこの4つの絆を作りにくく
一旦失敗すると慢性的にこの絆を構築することが難しくなること
そしてこの4つの絆を育てることを大事にしているとのことでした。
処遇上のポイントとしては、EBP、科学的証拠に基づいた実務を目標とし、
子供の一年はとても大事であり、
だからエビデンスをとって効果のあるものをやりたいとおっしゃっておられました。
実務的にどのように処遇プログラムをデザインして実践していくかの中で
生活を通して支援することが重要とされる生活モデルや、
まず、身体スキルと高めなければならない現状においての
(就業の際に身体能力が大切になってくるから)
集団行動訓練、協同作業(行動療法的アプローチ)
食事指導や、基礎学力と基礎的な社会技能の鍛錬
ディスカッション・スキル、対人関係スキル、
対立解決スキルプログラムなどが提示されました。
色々な非行のリスク要因にさらされていても、
健全に成長できる少年たち(「弾力(Resiliency)」のある少年たち)も
存在するという事実を踏まえ、
少年の弾力を高めてリスクを克服させることが大切であり、
弾力を養うためには以下のことが必要であるとのこと。
@絆を強めるチャンスを最大限に得る
A学業、社会性・感受性などの力や、セルフエスティームを大きく伸ばす
B行動形成のために必要な予測、強化、認知という一貫したシステムを創造する
そしてその為にはニーズ・ベースド・アプローチの視点が重要ではないかと
個々のニーズから指導を展開する必要性を訴えられました。
最後に実務家として
どのような犯罪性向があっても改善・再犯予防は可能だと思うこと
諦めてはいけないとのメッセージを伝えられ、
「Never too early, Never too late」という言葉で講演を締めくくられました。
実例であげられた話の中には、感動するものも沢山あり
少年たちの従来持っているであろう力を
健全に生きていく方向に向けてサポートしていく責任を
大人として、社会人として、そして一個人として痛切に感じた講演でした。
今年度のテーマは「子供虐待と非行・いじめ」。
今日の講師の方は現瀬戸少年院の教育調査官である向井氏で、
タイトルが表題の「あきらめない〜非行少年たちの人生と環境を見つめて〜」でした。
向井氏は「非行少年の再犯予防〜LD・ADHDに対する少年院の取り組みから」や
「軽度発達障害児に対する研究機関・」学校との協働」などの著書があり
非行の再犯予防などの実践を踏まえての講演でした。
最初に感想を述べると、最近参加した中では一番とも言える内容の面白さで
時間延長をしてもまだ足りないと思えるほど本当に有意義な講演でした。
彼らのライフコースがどの様なものだったかというところで、
ある程度予想はしていたものの、改めて現実を認識させられました。
@小学校から勉強についていけない
@友達ができなかった
@いじめられた、いじめ返した
@親に無視された、溺愛された
@悪い友達が出来て抜けられなくなった
@何らかの病気を抱えていた
@周囲が暴力的であった
基礎学力や知識の乏しさ、たとえば「あいうえお」が言えない、足し算が出来ない等の子が多く、向井氏によると、テストをすると20年前の非行少年の半分ほどしか点数を取れないとのこと。
実例として分数が計算ではできても、
カーテンを1/3開けるということは理解できないという
頭の中で生活概念に変換することが出来ないという話や
「ごみ箱を捨てて」と言われた子が、ごみ箱ごと袋に入れて捨てたという例等
理解力に欠ける子がいるという話などをされ、
また、「言語・国語」「数の概念・認識」「生活や認知」の問題の他
身体機能の問題も挙げられました。
このような問題行動等を発達環境の視点から理解していくことが必要で
発達上の課題があるとどんな問題がライフコース上、
派生するかと言う点を押さえながら、
彼らに合った必要な指導をしていくことが大切。
職員の手作り補助器具で、文字が川のように見えていた
学習障害の少年の問題をサポートした話においては、
職員の少年たちへの係わり方がよく分かったし、
的確な指導とその次へのステップを考えながらトータル的にサポートしているのが感じられました。
少年が本を読むのに一々文字を指で指しながら読んでいて
その為に時間がかかっていることを見つけた職員が、
試しに定規のようなものを作って使わせてみると早く読めるようになり、
学力がみるみる上がっていったそうですが、
文字が川のように曲がって見えていたことを
本人は誰もがそう見えていると思っており、
その障害のために両親や周囲から「何をやっても遅い」とか「のろま」と
馬鹿にされていたとのこと。
こういった障害を自分が持っているということが分かって落ち込んだけれど
(「セルフラベリング」の問題)
職員の「目が悪い人がめがねを使うのと同じ」というフォローによって立ち直ったという件には職員の方の深い愛情を感じました。
会話の内容が正しく理解できないという事例として挙げられた
ごみ箱を袋に入れて捨てた少年に対しては、
きちっとした言語モードで伝えてあげるという対処をされています。
推論が苦手なので、主語をはっきりさせ、細かく説明すると言うことをし
「このごみ箱の中のごみを赤い袋の中に入れて〜」と伝えることによって
確実にその少年は、こちらが意図したことを出来るようになったとのこと。
この少年も、今まではごみ箱をそのまま捨てたようなことをやっていて
親から殴られ、どうして怒られたのか分からないままだったといいます。
その子のいいところを見つけること、
その子に合った指導をすることによって、
自信が出来、生き生きしてくるのです。
少年院では、このように個々のニーズを理解し、処遇・教育計画を立てるとのこと。
発達上の課題を抱える少年特有のリスクとして次のようなものが挙げられます。
@学業の失敗
@社会的失敗
@感情の損傷
@差別的処遇
@自尊心低下
これらの問題をいかに予防するかが勝負になりますし、
非行と再犯のリスクファクターであるリスク因子をいかにコントロールするかが課題となってきます。
長くなってきたので端折りますが、
問題行動や反社会的行動を予防する基本戦略として
「社会統制のゆるみが逸脱を生む」というハーシーのボンド理論である
非行を抑止する4つの社会的絆(Bonds)、すなわち
@愛着(先生や親に対する愛情・尊敬)
A努力(得たものを失うことを恐れる)
B多忙(合法的な活動で非行にかかわる時間減少)
C規範意識(罪の意識の高さ)
を上げ、発達に問題のある子はこの4つの絆を作りにくく
一旦失敗すると慢性的にこの絆を構築することが難しくなること
そしてこの4つの絆を育てることを大事にしているとのことでした。
処遇上のポイントとしては、EBP、科学的証拠に基づいた実務を目標とし、
子供の一年はとても大事であり、
だからエビデンスをとって効果のあるものをやりたいとおっしゃっておられました。
実務的にどのように処遇プログラムをデザインして実践していくかの中で
生活を通して支援することが重要とされる生活モデルや、
まず、身体スキルと高めなければならない現状においての
(就業の際に身体能力が大切になってくるから)
集団行動訓練、協同作業(行動療法的アプローチ)
食事指導や、基礎学力と基礎的な社会技能の鍛錬
ディスカッション・スキル、対人関係スキル、
対立解決スキルプログラムなどが提示されました。
色々な非行のリスク要因にさらされていても、
健全に成長できる少年たち(「弾力(Resiliency)」のある少年たち)も
存在するという事実を踏まえ、
少年の弾力を高めてリスクを克服させることが大切であり、
弾力を養うためには以下のことが必要であるとのこと。
@絆を強めるチャンスを最大限に得る
A学業、社会性・感受性などの力や、セルフエスティームを大きく伸ばす
B行動形成のために必要な予測、強化、認知という一貫したシステムを創造する
そしてその為にはニーズ・ベースド・アプローチの視点が重要ではないかと
個々のニーズから指導を展開する必要性を訴えられました。
最後に実務家として
どのような犯罪性向があっても改善・再犯予防は可能だと思うこと
諦めてはいけないとのメッセージを伝えられ、
「Never too early, Never too late」という言葉で講演を締めくくられました。
実例であげられた話の中には、感動するものも沢山あり
少年たちの従来持っているであろう力を
健全に生きていく方向に向けてサポートしていく責任を
大人として、社会人として、そして一個人として痛切に感じた講演でした。

Posted by:ほいみ at 2009年10月12日(月) 07:51